インフルエンザの20価ワクチンの作成

季節性インフルエンザウイルス系統20種類すべてに対応する20価mRNAワクチンを作製され、マウスとフェレットで有効性が示された。

インフルエンザとはインフルエンザウイルスに感染して起きる感染症である。
ヒトではその中のA型とB型というインフルエンザウイルスの感染により度々流行を引き起こし、多数の感染者や死者が出ている。
A型とB型のインフルエンザは20系統、並びにそれに付随する多様な株から構成されている。

インフルエンザを予防するためには一般的には不活化ワクチンを用いる。
不活化ワクチンはウイルスの表面のHAタンパク質といった抗原を体内に入れることで、抗体を作る身体の免疫機構を働かせている。
しかしインフルエンザワクチンはワクチンの対象となるウイルス株以外にはほとんど予防効果がない。

2022年に発表された論文では、20 種類のインフルエンザウイルス系統すべてのHAタンパク質のmRNA配列を組み込んだ mRNA-脂質ナノ粒子を用いたインフルエンザmRNAワクチンで、そうした多様なインフルエンザウイルスからマウスとフェレットを守ることできたと報告している。

今までこうした普遍的なワクチンを作るためには、ウイルス内部のタンパク質(核タンパク質など)が標的として選ばれていた。しかしこうしたタンパク質は保存性は高いものの製造するのが難しく、感染から身体を守るほどの免疫機構を働かせることができなかった。

研究者らは各インフルエンザウイルス系統を代表するHAタンパク質をコードするmRNA全てを脂質ナノ粒子に封じめるmRNAワクチンを作製した。
そしてマウスとフェレットでのワクチン接種により、重症化と致死から免れることを実証した。
このワクチンは新しいインフルエンザ株による重症化からも保護された。

COVID-19の流行により構築されたmRNAワクチン製造プラットフォームは、柔軟性・製造スピード・安価といった利点がある。
現在のインフルエンザの不活化ワクチンは製造に半年以上かかり、インフルエンザの流行予測で対応するべき100日という目標時間や20種類のインフルエンザウイルスに対応できない。

現状ではなぜ20種類もの免疫反応の標的が増えても免疫反応が安定して行えるのかは謎である。
そのためヒトに投与した際に20種類のタンパク質それぞれに対してバランスのとれた免疫反応を誘導することはできないのではと危惧されている。

またこの普遍的なワクチンモデルをどこまで拡張できるか、ワクチンの接種回数を減らしたりできるかは謎である。

大きな懸念点としては、ワクチン標的の数を増やすとワクチン免疫を回避するためにインフルエンザウイルスの進化が進むという点がある。
筆者らはウイルスの感染と複製の2つの過程を阻止しているため問題ないと主張している。
むしろこのワクチンが新型ウイルスが出現する可能性を減少させると述べている。

本研究では20種類のインフルエンザウイルス系統すべてに対応するmRNAワクチンを作製した。
インフルエンザウイルス以外の感染症にも有用である考えられ、応用するためには今回のワクチンがどのようなメカニズムで感染を防ぐのか今後の研究が期待される。

【引用画像元】
Wikimedia commons (public domain)
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:EM_of_influenza_virus.jpg

【参考文献】
The influenza universe in an mRNA vaccine
https://www.science.org/doi/10.1126/science.adf0900

Advances in the development of influenza virus vaccines
https://www.nature.com/articles/nrd4529

Influenza Virus: Dealing with a Drifting and Shifting Pathogen
https://www.liebertpub.com/doi/10.1089/vim.2017.0141

Host and viral determinants of influenza A virus species specificity
https://www.nature.com/articles/s41579-018-0115-z

The evolution and future of influenza pandemic preparedness
https://www.nature.com/articles/s12276-021-00603-0

【原著論文】
CP Arevalo, et al. “A multivalent nucleoside-modified mRNA vaccine against all known influenza virus subtypes”
SCIENCE 24 Nov 2022 Vol 378, Issue 6622 pp. 899-904
https://www.science.org/doi/10.1126/science.abm0271

【感想】
やはり気になるのはヒトでの有効性、未知の作用機序とこのワクチンに対応した耐性株の出現ですね。今後の研究で明らかになることを期待します。

【元ツイート】
https://twitter.com/takatoh_life/status/1595985993521168385

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